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2007年01月31日

文化科学と自然科学との狭間で。

Sigrid Weigel: Genea-Logik. Generation, Tradition und Evolution zwischen Kultur- und Naturwissenschaften. München: Wilhelm Fink Verlag, 2006. [amazon.co.jp]

系図、伝統、遺産、家族と世代、ジャンルと文学、進化、そして遺伝学まで。精神科学と自然科学の交わりと差異をGenealogie, Generation, GenetikのGene-の論理のなかに探ってゆく、系譜の系譜学。このあたりの水準を出発点にしなければいけないのだろう。翻訳すべきかもしれない。
論集Sigrid Weigel (Hg.): Genealogie und Genetik. Schnittstellen zwischen Biologie und Kulturgeschichte. Berlin: Akademie Verlag, 2002 [amazon.co.jp]のプロブレマティックを継承した書物。

2007年01月30日

グスタフ・ルネ・ホッケの回想録。

マニエリスム研究で知られるホッケが1960年代から20年間近くにわたって綴った回想録。
Gustav René Hocke: Im Schatten des Leviathan. Lebenserinnerungen 1908 - 1984. München: Deutscher Kunstverlag, 2004. [amazon.co.jp]

ホッケはこの大著のなかで、自分の師であったロマニスト、エルンスト・ロベルト・クルティウスのローマにおける死を間近で看取った経験を回想したのち、クルティウス自身が年長の友人だったアビ・ヴァールブルクの死について綴った思い出を引いている。ヴァールブルクの晩年、彼らはマネが《草上の昼食》のモチーフを借りているマルカントン(マルカントニオ・ライモンディ)について語り合った。その後、ヴァールブルクの体調悪化を知ったクルティウスは、イタリア旅行の最中もヴァールブルクの秘書から随時連絡を受けていた。帰路の途上、マンハイムのホテルでクルティウスは一通の電報を受け取る。そこには「ヴァールブルク死去」とあった。打ちひしがれたクルティウスが眼を上に転じると、このごくありふれたホテルのベッドの上に、驚くべきことに、彼らの最後の会話の話題だったマルカントンによる銅版画の複製が架かっていた。「疑いもなく、それは死者からの挨拶だった」とクルティウスは書いているという。

同期性だろうか。そんな一節を読む直前にわたしが手にしていた書物もまた、The Illustrated Bartschのライモンディの巻だったのである。

2007年01月29日

見飽きることのない驚異の宝庫。


ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ビュフォン『ビュフォンの博物誌』(荒俣宏監修、ベカエール直美訳、工作舎、1991年)[amazo.co.jp]
15年以上前の刊行であり、18世紀博物学の見直しは南方熊楠再評価と相まって、1980年代以降のひとつのトレンドではあっただろう。この本の監修者がそのダイナモであったことは周知の通りだ。
それが何を変えて、何を残したのかについては、やや懐疑的にもなりがちなのだが、ともあれ、図像の力だけはまぎれもなく、つねに魅了される。

2007年01月28日

ブリティッシュ・ライブラリーから画像を取り寄せる。

1ヶ月ほどかかってようやくデータが到着。参考にした書誌の一部が間違っていたりして、手間がかかった。
「フォルトゥナの変容」を示す16世紀のメダイヨンの模写。ヴァールブルク「ムネモシュネ」に登場する図版の一部。
同定と確認の作業はまだ誰も完璧にはおこなっていない。
問題含みの不安定なアーカイヴであることは承知しているが、そうでないアーカイヴなどあっただろうか。
その不安定性と深層における揺らぎをこそ確定するために、ほとんど偏執的なまでの追跡が必要になるのだ。

2007年01月27日

イメージ批判(Bildkritik)のための美術史年鑑

ベルリン・フンボルト大学にある「文化技術(Kulturtechnik)のためのヘルマン・フォン・ヘルムホルツセンター」技術的イメージ部門が編纂する年2回刊行の雑誌。ISSN 1611-2512 [amazon.co.jp]など。

編集のトップはHorst Bredekamp。特集テーマは「非常事態のイメージ技術」、「理論の表面」、「ダイアグラムとイメージ的テクストの秩序」など(とりあえずタイトルの直訳のみ、詳細は機会があれば)。

2007年01月26日

森美術館オープニング。

18時の開始早々だったせいもあり、思ったよりも人出が多い。日本美術はそれなりのもの。寒山拾得図の今さらながらの不思議さ。縦長の画面に真正面を向いて描かれた若沖の象や蘆雪の黒牛、あるいは雪佳の金魚。暁斎の鳥獣戯画が見せる妖怪じみた動物たち。
笑い展は「笑う」ことを強要されるようで居心地が悪い。
「日本美術が笑う」のカタログのみ。所収のテクストはごく短いものばかりで全体としてとりとめがない。そこを軽みととるべきか。
 
 

2007年01月25日

岡田温司氏のまたまた新著。

驚くべき多産さ。
今回は『マグダラのマリア』に続く中公新書である。贈呈していただいた。

岡田温司『処女懐胎:描かれた「奇跡」と「聖家族」』(中公新書、2007年)[amazon.co.jp]

2007年01月25日

ダーウィン、フロイト、宮本常一


アダム・フィリップス『ダーウィンのミミズ、フロイトの悪夢』(渡辺政隆訳、みすず書房、2006年)[amazon.co.jp]
この場合、重要なのはダーウィンである。

佐野眞一『宮本常一の写真に読む失われた昭和』(平凡社、2004年)[amazon.co.jp]
著者の解釈はともかく、宮本常一の写真のために。

2007年01月23日

ダーウィンの夢(「悪夢」ではない)としてのナチュラル・ヒストリーの論理に向けて。

長谷川眞理子・三中信宏・矢原徹一『現代によみがえるダーウィン ダーウィン著作集 別巻1』(文一総合出版、1999年)[amazon.co.jp]
冒頭に収録された著者三人による鼎談での、長谷川氏の「ジョウゼフ・フッカー。すてきなひと(笑)」とか、「私の大好きな大好きなハックスレーさま」といった発言は、あけっぴろげで、いっそチャーミングだ。
ほかに久我勝利『知の分類史:常識としての博物学』(中公新書ラクレ、2006年)[amazon.co.jp]。知識の分類法に関する網羅的な書物なので、情報の整理には役立つ。この機会に「百科全書」的書物や「類書」をいくつか発注。

2007年01月22日

ゲーテのメタモルフォーゼ理論をめぐって。

Olaf Breidbach: Goethes Metamorphosenlehre. München: Wilhelm Fink, 2006.[amazon.co.jp]

著者Breidbachは科学史家、Ernst Haeckelの研究でも知られる。
導入に続いて、「メタモルフォーゼとしてのゲシュタルト」、「自然のメタモルフォーゼ」、「形態学」、「エピローグ」といった構成。最後のほうの節が「普遍的美学としてのメタモルフォーゼ理論」と題されていることが結論を示唆していそうだ。
末尾に置かれたこんな図(ロバート・フラッドによる自己規定的な自然過程)が印象的。

2007年01月21日

今日は東京散策の日。

東京地図研究者『地べたで再発見! 『東京』の凸凹地図』(技術評論社、2006年)[amazon.co.jp]

地図が立体的に見える3Dメガネ付き!

2007年01月20日

週末の腹ごしらえに。

写真の美しさが目に留まって、
福田浩『Meshi 飯』(ピエ・ブックス、2006年)[amazon.co.jp]
アートディレクションは田島一彦、写真は中西隆良。

著者は江戸料理「なべ家」主人。
黒塗りの椀に盛られた江戸の「飯」の数々がすっきりと一書にまとめられている。

いろいろ面白い豆知識が散りばめられていて、例えば——
江戸時代、唐辛子の代わりに饂飩に用いられた薬味は?
松茸飯に振りかけると絶妙な組み合わせをなす薬味とは?
精進の狸汁で狸肉の代わりに用いられる食材は?
「山葵をおろさず、霰に切る」——「霰に切る」とは? 霰に切った山葵のひと味違う辛みとは?
「ご飯に生玉子」という食べ方を一般に普及させた明治時代の傑物で、大画家の父でもある人物とは?
江戸時代、俵に詰めて中国に輸出されていた「俵物三品」とは、「煎海鼠(いりこ)」、「乾鮑(ほしあわび)」のほかに何か?
「柚珍秘密箱」とは何か?
「骨董飯」とは何か? 江戸時代にはどう読まれていたか?
「サヨリ(針魚、細魚)のような」という譬えの意味は?
「木耳(きくらげ)」は欧米では誰の耳に似ているとされているか?
「鴨南蛮」の「南蛮」の由来は?
料理や食べ物の寿命は平均何年か?
——こうしたことに興味がある向きにはお勧め。

2007年01月19日

さりげなくひそかに書誌日記として復活。Brothers Quayの作品集をきっかけに入手した書籍など。

The Quay Brothers - The Short Films 1979-2003 に収められた作品The Phantom Museumに魅せられ、関連した書籍を入手。

Ken Arnold and Danielle Olsen (eds.): Medicine Man: The Forgotten Museum of Henry Wellcome. London: The British Museum Press, 2003.[amazon.co.jp]

2003年に大英博物館で開催された展覧会に際して出版された書籍。次の解説はこの展覧会サイトから。

This is a fully illustrated book of the exhibition that explores the interlocking histories of art, science and society. Introduced by exhibition curators, Ken Arnold and Danielle Olsen, the book includes contributions from a wide range of scholars including Ghislaine Lawrence, Senior Curator of Clinical Medicine at the Science Museum, Chris Gosden, Lecturer and Curator at the Pitt Rivers Museum, and John Mack, Keeper of Ethnography at the British Museum. Containing more than 500 illustrations, as well as lively and provocative essays, this British Museum Press book provides insights into both the history of collecting and of health and medicine. Price £19.99.

Hildi Hawkins and Danielle Olsen (eds.): Phantom Museum and Henry Wellcomes Collection of Medical Curiosities. London: Profile Books, 2003.[amazon.co.jp]

This anthology of stories, true and imagined, is inspired by objects from Henry Wellcome's collection. Introduced by editors, Hildi Hawkins and Danielle Olsen, it includes works by A S Byatt, Peter Blegvad, Helen Cleary, Hari Kunzru, Tobias Hill and Gaby Wood. Each piece, be it history of ideas or historical fiction, responds to objects in the 'Medicine Man' exhibition. The Phantom Museum is published by Profile Books, price £12.99.
これも同様だが、収集品に基づくフィクションを集めた短篇集という変わり種。

今日はほかに吉田一穂詩集。