レヴィヤタンの影のなかに|田中純 2007年01月30日
グスタフ・ルネ・ホッケの回想録。
マニエリスム研究で知られるホッケが1960年代から20年間近くにわたって綴った回想録。
Gustav René Hocke: Im Schatten des Leviathan. Lebenserinnerungen 1908 - 1984. München: Deutscher Kunstverlag, 2004. [amazon.co.jp]
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ホッケはこの大著のなかで、自分の師であったロマニスト、エルンスト・ロベルト・クルティウスのローマにおける死を間近で看取った経験を回想したのち、クルティウス自身が年長の友人だったアビ・ヴァールブルクの死について綴った思い出を引いている。ヴァールブルクの晩年、彼らはマネが《草上の昼食》のモチーフを借りているマルカントン(マルカントニオ・ライモンディ)について語り合った。その後、ヴァールブルクの体調悪化を知ったクルティウスは、イタリア旅行の最中もヴァールブルクの秘書から随時連絡を受けていた。帰路の途上、マンハイムのホテルでクルティウスは一通の電報を受け取る。そこには「ヴァールブルク死去」とあった。打ちひしがれたクルティウスが眼を上に転じると、このごくありふれたホテルのベッドの上に、驚くべきことに、彼らの最後の会話の話題だったマルカントンによる銅版画の複製が架かっていた。「疑いもなく、それは死者からの挨拶だった」とクルティウスは書いているという。
同期性だろうか。そんな一節を読む直前にわたしが手にしていた書物もまた、The Illustrated Bartschのライモンディの巻だったのである。