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2007年02月02日

エルンスト・カントロヴィッチの論文抜き刷りから。

数年前に古書店のカタログで見つけて入手した抜き刷り。
Ernst H. Kantorowicz: On the Golden Marriage Belt and the Marriage Rings of the Dumbarton Oaks Collection. An Offprint from Dumbarton Oaks Papers, 14. The Dumbarton Oaks Research Library and Collection, Washington, D.C. Distributed by J. J. Augustin, Publisher: Locust Vally, New York. Library of Congress Catalog Card Number 42-6499.

1958年5月にDumbarton Oaks Research Library and Collectionで開かれたシンポジウム「The Dumbarton Oaks Collection: Studies in Byzantine Art」で読み上げられた論考とのこと。1951年4月に同じ場所でおこなわれた「Roman Coins and Christian Rites」に関する講演に基づくという。Dumbarton Oaks Collectionに収められた黄金製結婚ベルトビザンチンの結婚指輪を取り上げ、古代ローマからビザンチン帝国下のキリスト教に引き継がれた結婚儀礼の表象を考察している。
この抜き刷りで注目されるのは、表紙の右上に書き込まれた献辞だ。このような書き込みがあることは手にしてはじめて知った。

それはこう読める。

To Pan and Dora
gratefully as ever
EKa
Pan and Doraという名前から連想されるのは、プリンストン高等研究所でカントロヴィッチの同僚だった、同じドイツからの亡命知識人、アーウィン・パノフスキーとその妻ドーラである。Doraはともかく、パノフスキーがPanと呼ばれていたかどうかの確信がもてなかったのだが、それがパノフスキーのあだ名だったことを、パノフスキーの書簡集についての書評で知った(その書簡集とはErwin Panofsky: Korrespondenz 1910 bis 1968. Eine kommentierte Auswahl in fünf Bänden. Herausgegeben von Dieter Wuttke. Band III: Korrespondenz 1950 bis 1956. Wiesbaden: Harrassowitz, 2006 [amazon.co.jp])。
この抜き刷りはEKaと署名した中世史家から古代神話の自然神の名で呼ばれた美術史家とその妻(彼女もまた美術史家だった)へと贈られたものだったのである。
薄い冊子に書き込まれた短い謝辞に、20世紀の亡命知識人たちがもちえた濃密な知的交流の時間を透かし見る。