図像アトラス関連本|田中純 2007年02月11日
古書店から届く。ここにもSigrid Weigelが寄稿している。最近、よく目にする名前だ。
ドイツでは著名な文学研究者、ベンヤミンの研究書もある。多和田葉子氏の師匠と言ったほうがわかりやすいか。数年前からWarburgについて論考を多く書いており、そのテーマでシンポジウムも主催している。最近はGenealogie, Generationといった概念をめぐる研究も活発に展開。キットラー、ブレーデカンプとともに、ベルリンの人文知を代表する知性だろう(ただし、彼女はフンボルト大学ではなく、ベルリン工科大学の教授で、ベルリン文学・文化科学センター所長)。
届いた書物は
Sabine Flach, Inge Münz-Koenen und Marianne Streisand (Hg.): Der Bilderatlas im Wechsel der Künste und Medien. München: Wilhelm Fink Verlag, 2005. [ISBN: 978-3770540815]
ヴァールブルクの図像アトラス「ムネモシュネ」を出発点として、文化論の可能性を探る論集。
Weigelは「記憶の芸術−芸術の記憶:アーカイヴと図像アトラスの間、アルファベット化と痕跡の間で」という比較的短い論文を寄稿している。現代芸術における記憶の扱いから説き起こし、記憶術、アーカイヴ、精神分析といった話題をへて、ヴァールブルクの図像アトラスにいたる。
無難といえば無難な流れと言うべきか。
理論的な関心から書かれているので、図像アトラスについて発見はない。強いて言えば、彼女の最近のテーマである系統樹思考との関係を示唆したあたりか。
本書全体については、ざっと見たかぎりでは、Warburg InstituteのArchivistだったDorothea McEwan女史の論文を除くと、ヴァールブルクとはあまり関係なく、テーマは拡散している印象。それはそれでよい。
ただ、「ムネモシュネ」がイメージ・アーカイヴをめぐるさまざまなプロブレマティックにとって都合のいいモデルにしかなっていない状況は、いい加減に何とかならないものか、とは思う(そのモデルとしての側面を自分自身が一時期強調したことは否定しないが)。
そのためには、「ムネモシュネ」そのものとの取り組みが不可欠なはずだ。