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2007年02月23日

モレッリは画家が意識しない細部表現を通じた作品の鑑定技術を開発した人物として知られている。彼が学生時代に偽名で著わした二つの著作を編纂した書物を入手する。

Giovanni Morelli: "Balvi magnus" und "Das Miasma diabolicum". Giovanni Morellis erste pseudonyme Veröffentlichungen: "Balvi magnus" und "Das Miasma diabolicum". Herausgegeben und mit einer Einleitung versehen von Jaynie Anderson. Würzburg: Königshausen & Neumann, 1991. [ISBN 3-88479-507-4]

タイトルを試みに訳せば、『バルヴィ大王』と『悪魔の瘴気』となろうか。著者名のない『バルヴィ大王』は1836年にミュンヘンで25部が私家本として刷られ、トラウゴット・ゴットヒルフ・シュネック(Traugott Gotthilf Schneck)の遺稿をニコラウス・シェファー(Nikolaus Schäffer)が編集したという触れ込みの『悪魔の瘴気』は、1839年にシュトラスブルクの出版社G.Silbermannから刊行されている。『バルヴィ大王』のなかでモレッリ自身はニコラウス・シェファーとして登場しており、この名が『悪魔の瘴気』の編者名として使われたわけである。『バルヴィ大王』の完全な版は1冊のみ、『悪魔の瘴気』も2冊が現存するだけらしい。
前者は、要するに飲み仲間だった学生同盟の面々を描いた戯画を古代の美術作品のようにして解説したイコノロジーのパロディ(「バルヴィ」とはその友人のひとりのあだ名である)、後者は大気中の「悪魔的瘴気」をめぐる自然哲学的、生理学的、薬理学的研究のパロディである。画家の友人たちをもち、美術史に強い関心があった医学生モレッリの両面がそれぞれ反映された戯作と言えるだろう。
大学の教授陣の講義や振る舞いを学生がパロディにすることは1830年代ドイツの流行だったらしい(現代の日本でも変わりないかもしれない——ハスミ文体のパロディを自動的に作成するスクリプトがあったことを思い出す)。ネタもとを知らないわかりにくさはあるにせよ、とりあえずは挿画だけでも楽しめる。

『バルヴィ大王』表紙

戯画

『悪魔の瘴気』より、大人用と子供用のガスマスク。

特製顕微鏡やガスマスクのフィルターなどのほか、右の二つは聖なるキリスト教徒の女性の胆汁拡大図(下)と邪悪な人物の胆汁拡大図(上)

死せるシュネック